オリジナルジュエリー創作やリフォームを手がけるジュエリーデザイナー、広瀬たかしさんのお店を訪ねた。JR「木曽川駅」から歩いて2、3分のところにある小さなアトリエ兼店舗は、その名もずばり「広瀬たかしの仕事場」。宝石の仕事にかかわって30数年。豊富な経験の中で培ってきた技術により、多くの宝石ファンから厚い信頼を得ている。
もそも宝石に興味を持ったのは、大学時代のころ。「彫金がちょうどはやりだしたころでね。私も文化教室の彫金クラスにせっせと通っていました」と語る広瀬さん。趣味として始めた彫金だったが、次第にその面白さに目覚め、卒業後は貴金属のデザイン会社に就職。そこで宝石加工の技術を身につけ、独立。以来この道一筋に自らの技と感性を磨き続けている。
「ひとり立ちしてからもうすでに20年以上になります。この店舗を持ったのは7年前。鉄工所を営んでいた父親がリタイアしましたので、作業場だったここをアトリエ兼店舗に改装したんです」
鉄工所とジュエリーアトリエ…。一見まったく違う職種に見えるが、双方とも金属を扱うという点では、共通している。跡こそ継がなかったが、金属を加工する仕事に就いたのは、お父さんの影響が少なからずあったのかもしれない。
オリジナルジュエリーの創作はもちろんだが、リフォームの仕事もたくさんある。オリジナルの仕事に比べれば、地味な作業が多いが、その分、経験や細かい手作業が必要なので、広瀬さんの職人技が最も生かされる仕事といってもいいだろう。
例えば、以前はエンゲージリングや結婚指輪なども「立て爪」といって、石の部分が立体的に突出しているのが主流だったが、使いづらいということもあり、今はあまりはやらない。そうした昔の指輪を「現代風に直してほしい」という要望が多いそうだ。
「お母さんやおばあちゃんの指輪を娘さん、お孫さん、あるいはお嫁さん用にリフォームするというパターンですね」
そんな場合は、まずお客さんがどんなイメージを頭の中に描いているのかをしっかりとヒアリングして引き出す。そしてそれをデザイン画に起こしていく。
「大体5点ほどのデザインを起こします。それを見て気に入ってもらって、初めて実際に創っていく作業にかかるわけです」
デザイン画を描くところまでは無料なので、その時点で依頼するかどうかを最終決定すればいいということだ。
「指輪の石でペンダントをつくりたい。また複数の使わなくなった石を使ってペアのブローチにしたいなど、お客さんのご要望はさまざま。なるべくご希望に沿った形で、私もアイディアを提案していきます」
地金も加工できるので、有効利用して予算を低く抑えることも可能だ。また普通の人では気がつかない、小さな傷やはがれがあった場合は、その場でお知らせして、その部分を隠せるようなデザインを考えていく。
「エメラルドなどは硬い石なので、傷はつきにくいのですが、粘り気がないので意外に欠けやすいんですよ。ですから水仕事などをする時は、必ずはずしてされることをおすすめします」
柔らかいオパールなども同様で、傷がつきやすいので、普段からていねいに扱うことをおすすめするとのことだ。
このほか、指輪のサイズ直しも引き受けている。基本料金(小さくする場合)は1,575円で、ワンサイズ大きくするごとに、プラチナの場合は840円、18金の場合は315円、シルバーの場合は210円ずつプラスされる。ネックレスの場合は1ヵ所の切れにつき、1,050円で修理してくれるので、壊れても簡単にあきらめずに広瀬さんに直してもらおう。
「サイズ直しは大体30分〜1時間あればできますので、預けて、近くのショッピングセンターでお買い物してきてもらえば、お帰りには直っていますよ(笑)」とのことだ。
手仕事が好きでこの世界に入った広瀬さんは、とにかく細かい作業をコツコツと積み重ねていくことが第一と考えている。
「0.1ミリ違うだけで、全体の雰囲気が変わってきてしまいますからね。ジュエリーデザインはバランスが大切ですから、そのためにも細かい部分に細心の注意を払っています」
広瀬さんにとって、石は、ダイヤであろうと、ルビーであろうと、ジュエリーづくりの材料にすぎないという。
「特別な思い入れがあると、デザインも自己満足に終わってしまう可能性があるから、無意識に石へのこだわりを持たないようにしているのかもしれませんね」
完成した作品をお客さんが、日常的に身につけてくれることが、職人として最高の喜び。シンプルな中に個性の光るジュエリーづくりを地道に続ける広瀬さんである。